えっちゃんの中国美大日記 第8回「中国美術界の仕掛け人 第一弾:趙力さん」WEB連載えっちゃんの中国レポート2014年03月12日share facebookshare xshare pinterestshare lineshare hatebu 写真上は趙力さん 中国美術界にて活躍している人、注目の人を紹介する「中国美術界の仕掛け人」、始まりました。第一弾があるということは、連載なのでは?とみなさん思うかもしれませんが、できるだけ更新できるように頑張りたいと思います! 第一弾では、前回アート北京2013でもインタビュー(月刊美術2013年6月号紙面にて)をした趙力さんです。彼はアート北京のディレクター、キュレーターであり、現在私の通っている中央美術学院人文学院の副教授、副院長を務めています。 これから迎えるアート北京2014(期間は2014.4.30から5.3まで)を糸口に中国現代アートの現状を伺います。 江上:アート北京は今年で9回目を迎えます。趙さんはアート北京のアートディレクターをされていますよね。先日ようやくアート北京2014の参加画廊が公表されたところですが、昨年と比べて今年のアート北京にはどんな特徴があるといえますか? 趙力:今の現代アートの流れがそうであるように、内容がコンテンポラリーアートだけでなく、クラシック(経典区と中国では呼ぶ)の面も充実したとても総合的な博覧会といえます。コンテンポラリーは多くを占めますが、水墨画、伝統的なものと、デザインと観客との関係性、パブリックアートに関する新しいもの、21世紀の美術経済、企業収蔵に関する討論会もアート北京の会期中企画されています。 江上:ええ、昨年はアート北京会場までの野外でのパブリックアートがとても印象的でした。昨年は中日韓の青年芸術家の企画展がありましたよね。今年はあるでしょうか? 趙力:中日韓展覧会とは違うツールを通して表現しようと思います。例えばコレクターの作品展のなかにも、日本人作家の作品が含まれていますし、今年の討論会にはアートフェア東京の方も呼ぶ予定ですよ。 江上:それは楽しみですね。教授にアート北京と多忙な趙さんですが、アート北京以外にも主にどのような活動をしていますか? 趙力:基本的には美術教育のほうに力を入れてます。大学で芸術管理を教えているので、それが自分の実験の場でもあります。芸術管理という分野のせいもあって、社会現状とのつながりがとても深いので、社会への参加度を生徒にも求めています。教育だけでなく、教育の形式を通して社会へ貢献することが学校全体の精神にもつながっています。 江上:そのような精神があることは、美術学校として、とてもよいを環境をつくっていますね。美術館ではよく趙さんの名前を見かけます。 趙力:個人的には若手芸術家に関する展示には多く関わるようにしています。 江上:ではアート北京からもわかるように、現代アートの現状と中国の現代アートの2020年後、2050年後をどのように発展してゆくのか教えてください。 趙力:中国の美術はとても混沌としています。整理すると、さらにインターナショナルな、どの国の人が作ったのかわからないような作品と、一方で逆に中国化、中国の要素、技法の入ったもの、3つ目には若いアーティストたちによるとっても前衛的なもの。これら3つにまとめることができると思います。 江上:ええ、昨年のアート北京での新水墨を見て、新しいナショナリズムを感じました。 趙力:若手の作家に関する応援もしてます。それに関するプロジェクトもたくさんつくりました。 江上:それはうれしいことですね。日本の作家の参与などがあれば、大きなエネルギーになるのではないでしょうか。 趙力:日本の若手作家の展示をぜひしたいですね。でも肝心な若手作家の制作の現状がわかりません。地震後は日本に行く機会も減ってしまいました。 江上:ぜひ趙さんにも日本にきていただきたいです。では日本のアートの現状をどう考えますか? 趙力:日本の美術にはこれらの特徴をあげられます。一つ目は日本性、もうひとつは日本が西洋からの影響を受けつつ国際的な発言力のあるアーティストが多い。この二つの特徴はアジアの美術とほぼ同じです。多くの角度から見ると、日本の現代アートの現状は少し不明確な気がします。それは文化をみる角度が80、90年代に日本美術がアジア性の問題について考えられていたのに対し、近年はその問題が討論されていないからではないでしょうか。 江上:日本の今の展示にも、「日本を再定義」するような展示が多いような気がします。 趙力:外国の角度から芸術を見ると、この10年、20年は明確な変化がないように感じます。そこでのおおきなキーワードがアジア文化、それと村上隆、奈良美智などの脱美術館の問題だと思います。私は美術の専門なので、日本と中国が多くの交流をすることを期待しています。 江上:ええ、私も中国の美術の現状を日本の方々に伝えたい、文化交流の架け橋になりたいです。では最後に先生が掲げる理想の藝術の状態はなんでしょうか? 趙力:時代を反映し、時代を超越する藝術がアートを前に動かす原動力になると思います。前へ前へと向かう、未来性のある藝術が根本的な特性だと考えます。 江上:これからの芸術がとても楽しみです。今日はありがとうございました。 時代に反映されながらまたそれをひっぱっていく文化。そのとてつもないエネルギーがきっと未来をおもしろくいていくのだろう!そう考えるとわくわくを抑えきれません。 江上 越(Egami Etsu) 1994年千葉市生まれ。千葉県立千葉高校卒業後、2012年中国最難関の美術大学・中央美術学院の造型学院に入学。制作と研究の日々のかたわら、北京のアートスポットを散策する。ここでは北京のアート事情、美大での生活などをレポートしてもらう。« えっちゃんの中国美大日記 第7回「北京到着……、PM2.5の恐怖」デビュー2014審査所感 »