えっちゃんの中国美大日記 第1回「彫塑中国展レポート その1」WEB連載えっちゃんの中国レポート2013年02月20日share facebookshare xshare pinterestshare lineshare hatebu 江上 越(Egami Etsu) 1994年千葉市生まれ。千葉県立千葉高校卒業後、2012年中国最難関の美術大学・中央美術学院の造型学院に入学。制作と研究の日々のかたわら、北京のアートスポットを散策する。ここでは北京のアート事情、美大での生活などをレポートしてもらう。 迫力の彫刻がズラリ! 彫塑中国展レポート (その1) ■いきなりの迷子 今日は誘われて、「彫塑中国」中央美術学院彫刻回顧展オープニングセレモニーに出席する。 近年ますます注目されている中国の彫刻家。その多くを輩出してきた中央美術学院でこの展覧会が行われるのは意味深い。会期は9月1日から12月31日まで、場所は中央美術学院雕塑芸術創作研究所。中央美術学院彫塑系設立以来の教授、卒業生の代表作品、貴重な原稿、写真などの文献資料合わせて400点が一堂に公開される。中国彫刻史上の著名な作家の作品だけでなく、中央美術学院の教育と創作の歴史の回顧としても重要だ。 絶対に見なきゃ!そう思って、さっそく出かける準備をはじめる。写真に映える赤の服に着替える。 中央美術学院美術館副館長の唐斌先生からの電話では、寮まで迎えに来てくれるらしい。早速入り口で待つことに。今日は雨が激しく寒い! 唐先生は傘を持ってやってきた。私は車の後部座席に。先生は「さっきは雨こんなに強くなかったのになあ」「今日行くところは車で20分の場所。北京で車で20分だったら全然遠くないよ」といろいろ話してくれる。 今回展示している彫刻科の研究センターは、普段は学生の姿はなく、先生や作家の作業場。最近建てられたばっかりなので唐先生も行く機会があまりなく、迷子になってしまった。 ■空間の迫力がスゴイ 着いた建物は、見た目は普通だけれども車がたくさん止まっていて、どれも高級車。外の駐車場はいっぱいだった。敷地内には造型学院副院長の隋建国先生のおおきな彫刻作品がドカーン並べてあり、その左にも彫刻、右奥にも彫刻、それに多くの大人たちが会話していて、まだ美術館内に入っていないのに多くの人・・・・・・。 入り口は小さいけども、赤いドレスを着たモデルさんたちが8人ほど両側に立っていた。 唐先生は式場内に入った瞬間からたくさんの人に呼ばれて、私に先に見てて、後で探しに行くと言ってどこかに行ってしまった。 さて会場内はというと、工場のような高い天井から、人間をくわえたカバの彫刻がバッと目に入ってきた。空間の迫力がスゴイ。両側にも彫刻、二階に はもう少し小さめの彫刻などほんとうに彫刻尽くし。そしてそれに劣らないほどの来場者の数! 中央美術学院というポロシャツを着た学生が多いのは、ボラン ティアかな? 作家と話している人もいれば、名刺を交換し合っている人、画廊の人など、とにかく人、人、人ばかり。 それに黒いドレスを着たバイオリニスト5人が片隅で音楽を演奏して、展示に華を添えていた。 教授陣の代表作品がたくさん展示されていて、ほんとにこの小さな空間にぎゅっと濃密に詰め込んだ感じ! 前から耳にしていた展望教授の「假山石」もあって、テンションは上がりっぱなし。2階に上がると、古い建物を模した小品や狼の毛皮や剥製を使った作品など小作品のコーナーになっていた。私のお気に入りは金属で作った雲、シンプルで形がとってもかわいいから。 ■中国彫刻90年の流れが一目瞭然 今回の展示では90年の中国彫刻史を、第一章「歴史経典」、第二章「伝承漸変」、第三章「拓展转型」と3つで構成することで、中国彫刻の大きな流れを捉えることができるようになっていた。 「歴史経典」とは20世紀、中国近代彫刻的表現の対象が「神」 から「人」へ変化し、その後「人民」、「リーダー」の概念が交じり合って、改革開放前の中国近代彫刻の主題となった。様式としては主にヨーロッパ古典の写 実主義とソ連の社会的リアリズムが多く、また民族伝統の彫刻様式とも結合した作品など、半世紀以上にわたる模索を通じて、中国現代史にとって重要な作用を 及ぼした作品が多数あった。 二番目のキーワードである「传承漸変」とは、改革以降の新しい潮流。彫刻家たちは彫刻という芸術形式の範囲の内でさまざまな個性を発揮し、既成の彫刻伝統の上に様式、材質、概念などの単一化した彫刻の束縛を打ち破り、传承の基礎の上に変化を加えて彫刻と多元化する社会とを結合させたことをいっている。 最後のキーワード「拓展转型」は彫刻の核心的概念である「形体」の中に、文化的空間的要素を含む一方、「時間」についても深く考え抜いた作品を提示することで、彫刻の広域化とともに、彫刻に対する常識を変換したことを意味している。 この展示は中国の彫刻に関する研究を触発し、彫刻の芸術性を広く知らしめて、作品の収蔵をすすめることになる。こうして一般社会に彫刻を理解する場を提供することで、ますます多くの人が彫刻に興味を持つだろう。 (第2回へ続く) 次回の配信をお楽しみに! « 月刊美術2013年3月号 噂の新人2013+美術新人賞デビュー2013 450号記念特大号デビュー2013審査所感 »