えっちゃんの中国美大日記 第26回「中国美術界の仕掛け人 第6弾:写実画派で芸術一家の艾軒」WEB連載えっちゃんの中国レポート2015年03月03日share facebookshare xshare pinterestshare lineshare hatebu 絵画は死んだと言われている中、独自の道で写実絵画が発展してきた中国。中国写実画派の展覧会がちょうど中国美術館で展示されていることもあり、今回は主要メンバーの一人である艾軒に突撃インタビューをしました。 また彼の父が艾青という有名な詩人、弟は現代アーティストのアイウェイウェイという芸術一家です。 艾軒 1947年生まれ 国家一级美术师 北京画院油画創作室主任,中国美术家協会会員,北京画院芸術委員会委員 中国写実画派の主要メンバー。 中国美術館の「写実画派10周年展」 江上:先日中国美術館にて中国写実画派10周年の大規模な作品展があり、先生の作品も多くありましたが、いかがでしたか? 艾軒:予想以上の展覧会だったと思います。今回の中国写実画派10周年展覧会は10周年ですからね。私も所属する中国写実画派は毎年会議を開いて中国美術館、あるいは保利ビルなどの場で毎年展覧会を開いています。10年前第一回目の中国美術館での中国写実画派展覧会のときは、ちょうど印象派のマネの展覧会があったもので、それで人が多かったのですが、今回の10周年展の主役は私たちで、人が10年前よりも断然多いですね。もともと今回の展覧会が10日間しか開かないのに加え、事前に一切宣伝をしていませんでした。 江上:今回の展示は中国の絵画の新しい道しるべを若者たちに示したのではないでしょうか? 艾軒:そうですね。われわれの仕事は毎年いくつかの会議を開いて展示をするということでもありますが、やっぱり写実画を描く若い人たちを元気付けたい。 今はインスタレーション、映像などがあってからか、描くのよりもコンセプトのほうが大事と考えて、多くの手法を放棄している人が多いですが、今回の展示の人気さを見て、まだまだ写実も頼りになると安心したのでは(笑) やっぱり絵の中には精神がないとだめですね。 チベット少数民族を何十年も描き続ける訳。。。 江上:精神といいますと、先生の絵はずっとチベットの少数民族が題材ですよね。 艾軒:チベット民族を描く人は多いですね。そこで私の絵は主観的色彩が多いのが特徴で、ブルーグレー、淡い紫色的な色調です。それには個人的な気持ち、画面の情緒など、人物の表情も憂鬱な表情で、絵自身が悲しみやある種の困難、挫折などの言葉では表せないもの経験しているようです。 詩人である父親の艾青からの影響 江上:先生の描いた聖山を見て、私はなぜか日本の富士山を思い出しました。もしかしたら日本の自然崇拝と関係があるのかもしれません。先ほど先生の家族について話をしましたが艾軒先生の父は中国では有名な詩人である艾青ですね。また艾青の先生である林風眠は中国有名な画家ですが、絵を描く上で父親からの影響はありますか? 艾軒:やはりDNAではないでしょうか? 生活上では父親に対してあまり良い記憶はありません。世界で活躍する艾未未は私の弟ですが、艾青の父親はもともと地主で土中に隠していたお金を艾青のフランスへの美術留学の資金としてあげます。でも帰国後は絵は描かずに詩を書くようになりました。私の小さいころは下の兄弟もいたのであまり目をかけてもらえませんでした。だから父から受け継いだ唯一のものはDNAですね。 聖山 2009年 90×220cm 風が歌声を吹き散らすように 1995年 100×100cm 凍土帯 1990年 100×80cm 江上 越(Egami Etsu) 1994年千葉市生まれ。千葉県立千葉高校卒業後、2012年中国最難関の美術大学・中央美術学院の造型学院に入学。制作と研究の日々のかたわら、北京のアートスポットを散策する。ここでは北京のアート事情、美大での生活などをレポートしてもらう。« えっちゃんの中国美大日記 第25回「中国美術界の仕掛け人 第5弾:版画の未来を考える、王華祥」2015年4月号巻頭特集は「春の展覧会×200plus」 »